万が一に備えて、定期的にバックアップを取る必要があります。MySQL
では、いくつかのツールを使用して、フル
バックアップ
(ある時点でのデータのスナップショット)
を取ることができます。たとえば、InnoDB
Hot Backup
を使用すると、オンラインでブロックしていない
InnoDB
データ
ファイルのフィジカル バックアップ (物理的)
が取れ、 mysqldump
を使用すると、オンラインのロジカル
バックアップ (理論的)
を取ることができます。このセクションでは、mysqldump
について説明します。
MySQL Enterprise. MySQL Network Monitoring and Advisory Service では、バックアップとレプリケーションに関する専門的なアドバイスを提供しています。詳細はhttp://www-jp.mysql.com/products/enterprise/advisors.html を参照してください。
負荷が少ない日曜の午後 1
時にバックアップを取ると仮定します。次のコマンドで、すべてのデータベースの
InnoDB
テーブルすべてをフル
バックアップします。
shell> mysqldump --single-transaction --all-databases > backup_sunday_1_PM.sql
これは、オンラインのバックアップをブロックしていない場合のため、テーブルの読み書き込みには影響しません。ここでは、バックアップ対象のテーブルが
InnoDB
であると仮定しているため、--single-transaction
オプションでは整合性のあるデータ読み込みになり、mysqldump
で使用したデータは変更しません。(クライアントによる
InnoDB
テーブルへの変更は、mysqldump
プロセスで対象になっていません。)
異なる種類のテーブルもある場合には、そのテーブルがバックアップ中に変更しないものとします。たとえば、mysql
データベースの MyISAM
テーブルでは、バックアップ中に管理系の変更を
MySQL
のアカウントに対して行っていないものとします。
mysqldump による
.sql
ファイルには、後で使用するテーブル
ダンプのリロードに使用する SQL
INSERT
ステートメントのセットが入ります。
フル バックアップは不可欠ですが、時間を要します。大きなバックアップ ファイルの生成には時間がかかります。前回のフル バックアップを行ってから全く変更のない部分も含めて、すべてのデータをフル バックアップを何度も行うことは最適化とはいえません。一度、フル バックアップを行ったら、次からは、インクリメント バックアップを行う方が効率的です。この方法であれば、負荷も減り、生成にかかる時間も短縮できます。トレードオフとしては、リカバリを行うときに、フル バックアップをリロードするだけではデータの回復にはならない、増加分にはインクリメント バックアップも使用して回復しなければならないという良し悪しがあります。
インクリメント
バックアップを行うには、増加分/変更分
(インクリメント)
を保存する必要があります。これには、MySQL
サーバを常に --log-bin
オプションで起動する必要があり、これにより、データ更新中に合わせて変更をファイルに保存できます。このオプションはバイナリ
ロギングを可能にするものであるため、サーバは
MySQL バイナリ
ログというファイルに、データ更新に関するそれぞれの
SQL
ステートメントを書き込みます。ここで、数日間実行していた
MySQL バイナリ ログ
ファイルの例を次に示します。これは--log-bin
オプションで起動した MySQL サーバのデータ
ディレクトリのものです。
-rw-rw---- 1 guilhem guilhem 1277324 Nov 10 23:59 gbichot2-bin.000001 -rw-rw---- 1 guilhem guilhem 4 Nov 10 23:59 gbichot2-bin.000002 -rw-rw---- 1 guilhem guilhem 79 Nov 11 11:06 gbichot2-bin.000003 -rw-rw---- 1 guilhem guilhem 508 Nov 11 11:08 gbichot2-bin.000004 -rw-rw---- 1 guilhem guilhem 2247446 Nov 12 16:47 gbichot2-bin.000005 -rw-rw---- 1 guilhem guilhem 998412 Nov 14 10:08 gbichot2-bin.000006 -rw-rw---- 1 guilhem guilhem 361 Nov 14 10:07 gbichot2-bin.index
再起動する度に、MySQL
サーバは新たなバイナリ ログ
ファイルを作成します。これには連続する番号のシーケンスがあります。サーバを実行する一方で、そのサーバに使用中のバイナリ
ログ
ファイルを閉じて、新しいファイルを開始するように命令することができます。それには手動で、FLUSH
LOGS
SQL ステートメント、または
mysqladmin flush-logs
コマンドを使用します。mysqldump
にもログをフラッシュするオプションがあります。ディレクトリの
MySQL バイナリ ログのすべてのリストを含む
.index
というファイルがデータ
ディレクトリにあります。このファイルはレプリケーションに使用します。
MySQL バイナリ ログでは、インクリメント バックアップのセットを形成しているため、リカバリでは重要になります。フル バックアップを行う場合に、ログのフラッシュを確実に行うと、それ以後のバイナリ ログ ファイルは変更した部分だけのデータを含むファイルになります。ここで、前述の mysqldump コマンドを若干修正すると、フル バックアップを行った時点でのMySQL バイナリ ログをフラッシュするようになります。つまり、ダンプ ファイルには新しいバイナリ ログの名前を含むようになります。
shell>mysqldump --single-transaction --flush-logs --master-data=2 \
--all-databases > backup_sunday_1_PM.sql
このコマンドを実行後、データ
ディレクトリには
gbichot2-bin.000007
という新しいバイナリ ログ
ファイルができます。.sql
ファイルは次のラインが入ります。
-- Position to start replication or point-in-time recovery from -- CHANGE MASTER TO MASTER_LOG_FILE='gbichot2-bin.000007',» MASTER_LOG_POS=4;
mysqldump コマンドでフル バックアップを取っているため、これらのラインは 2 つの意味があります。
.sql
ファイルは、gbichot2-bin.000007
というバイナリ ログ
ファイル、またはそれ以降の新しいファイルに変更が書き込まれるよりも前の、すべての変更を含む。
バックアップ後にログしたデータのすべてが、.sql
には存在しないが、gbichot2-bin.000007
というバイナリ ログ
ファイル、または以降の新しいファイルに存在する。
そして、月曜の午後 1 時に、新しいバイナリ
ログ
ファイルでログを開始するために、それまでのログをフラッシュして、インクリメント
バックアップを取ります。たとえば、mysqladmin
flush-logs
コマンドを実行して、gbichot2-bin.000008
というファイルを作成します。ここで、日曜の午後
1 時のフル
バックアップを起点とし、月曜の午後 1
時までを終点とするすべての変更が、gbichot2-bin.000007
ファイルとなります。ここの手順で、このファイルには大事な役割があるので、コピーしてテープ、DVD、別のマシンなど安全な場所に保管しておきます。そして、翌日、火曜日の午後
1 時に、改めて、mysqladmin
flush-logs
コマンドを実行すると、gbichot2-bin.000008
ファイルが、月曜の午後 1
時を起点とし、火曜の午後 1
時を終点とするすべての変更を含むことになります。(これも安全な場所にコピーを保管します。)
MySQL バイナリ ログはディクス スペースを消費するので、必要に応じてスペースの解放が必要です。その 1 つの方法としては、たとえば、フル バックアップ後に不要なったバイナリ ログを削除します。
shell>mysqldump --single-transaction --flush-logs --master-data=2 \
--all-databases --delete-master-logs > backup_sunday_1_PM.sql
注意:サーバがレプリケーションのマスタ
サーバである場合は、mysqldump
--delete-master-logs というコマンドで MySQL
バイナリ ログを
削除するということには危険が伴います。つまり、スレーブ
サーバでまだバイナリ
ログの内容を完全に処理し切れていない可能性があります。PURGE
MASTER LOGS
ステートメントの詳細
(項12.6.1.1. 「PURGE MASTER LOGS
構文」) で、MySQL バイナリ
ログを削除する前の確認操作について参照してください。